子どもの慢性便秘症は、どうやって治すの?
小児外科部長
ころころ、ぽろぽろうんち、それから、ごつごつしたうんちや、ものすごく大きなうんち。これらは全部、見ただけで便秘と診断してもいいくらいです。ねっとりとしたうんち、すごく臭いうんちも便秘です。硬く大きな便でトイレが詰まったりすることもあります。便秘というのは治療の対象だという認識が必要です。
幼児の便秘の仕組みは、便が直腸に溜まってしまうことです。普通の人は、便が直腸に降りて来て、直腸の壁が便塊で押されることでうんちがしたくなります。しかし便秘の人は、便が溜まることで、直腸がひろがりっぱなしになり、感受性も鈍くなり、1日分の出しやすいうんちが来てもわからないため、また数日分を溜めてしまいます。便秘が治らない仕組みの直腸になっているのです。
また、便が大腸にたくさん溜まると、いい菌が死んで悪い菌が増えます。そうすると、腸管細菌叢が悪化し、便が溜まり過ぎたためにかえって下痢便になり、肛門のすぐそばの硬い便のまわりから漏れてくることがあります。ほとんどの漏れ、下着の汚れは便秘が原因で、遺糞症とも言います。これらは全て異常な状態で、病気といってよいのです。そして、これは漏らしているわけではなく、漏れてしまう状態ですので、しつけや知能などの問題ではありません。治療すればよくなります。
治療は、まず、溜まっている便を除去します。そして、溜まらないように定期的に排便する訓練をします。薬も時には必要です。
最初は浣腸の治療が主体になりますが、もちろん、飲み薬で効けば飲み薬で結構です。直腸を空っぽにして、いい直腸をつくり直すために、毎日排便するという習慣づくりが大切です。飲み薬と浣腸は、生活パターンに合わせて選択していきます。少しの補助手段で快適な生活を送ることができるなら、薬を使っていけばいいのです。
慢性便秘の治療のゴールはいいうんちを毎日すっきりできる腸にもっていくことです。つまり、うんちをしたい感じがありトイレに行くと、ほぼ毎日バナナうんちが楽に出て、そしてすっきりするというのが快便で、これができる腸をつくるようにいろいろな治療をします。
子どもは成長する過程でよくなることもたくさんありますので、良い状態で成長するのを待ちましょう。悪い状態で待っていると治るものも治らない、そういうふうに考えていただきたいと思います。
講師プロフィール
東京都出身。
慶応義塾大学病院、国立小児病院(現:国立成育医療研究センター)などを経て、現在、さいたま市立病院小児外科部長。医学博士、小児外科学会指導医。先天性の小児外科疾患の治療に携わる中で、長期のフォロー、難治性疾患の治療・栄養管理に取り組んできた。特に、排便障害を持つ疾患での排便管理と合わせ、一般の小児の慢性難治性便秘症の治療に携わり、現在、「排便外来」には、多数の機能性慢性便秘症の方が来院している。
近著:『赤ちゃんからはじまる便秘問題』(言叢社)