うんち研究室 - 女はたまる、男はくだる

悪化する若者の腸内環境

 「便の研究をしている辨野先生にウンチを調べてもらいたい」――最近の健康ブームにのって、私の研究室にもマスコミの取材が頻繁に入るようになりました。のっけから、臭い話で恐縮ですが、まず、そこで「鼻にした」ウンチの話をしましょう。

 厳重に包装されクール宅配便で送られてきた容器を開けたとたん、どう形容していいかわからないほどの強烈な臭い。石のようにコロコロで、数層に重なっているウンチです。日本で一番ヒトのウンチをみてきたと豪語する私でさえ、初めて目にするウンチでした。そしてその中身にも驚かされました。通常、健康な人間の便は半練状で、水分含量は80%前後。水分が70%でかなりひどい便秘ですが、そのウンチはなんと60%。さらに善玉菌がほとんどなく、悪玉菌が超優勢の驚異的な数字で棲みついていることもわかりました。

 その驚異的なウンチの主は一人暮らしの20歳の女性。彼女の食事は「お菓子しか食べない。あとはペットボトルのジュースかな」。生活は不規則で、お腹がすいたら、手近なお菓子だけを口にするそうです。なるほど、それでは便秘もするし、便意も感じなくなるわけだと思いました。

 このように若い女性のウンチを多くみてきて、わかった驚くべき現実は「臭くて硬い」ウンチがなんと多いこと! 今、若い女性の腸内環境には、劇的な変化が起きているようです。

中高年男性も・・・

 一方、毎日、コンピューターの前に座って運動不足、ストレスがたまって、たばこを吸う。食事といえば、高カロリーのスタミナ食。簡単に、短時間、しかも食べる時間は一定していない…。自分のことかと思われる男性が多いのではないでしょうか。いわゆる「お父さん世代のウンチ」はどうでしょうか?

 ある製薬メーカーの調査によると、家族の中で最もトイレの後が臭いのは、「中高年の男性」との結果が出ています。オヤジ世代の80%の男性が、家族から「トイレの後が臭い」と言われると答えているのです。このウンチの臭さは、悪玉菌が有害物質を発生させるからです。さらに、ストレスを感じている男性は、下痢の回数が多いといいます。いわゆる過敏性腸症候群です。毎日感じるストレスにより、大腸粘膜はヘトヘトに疲れ、傷つき、下痢が止まらないのです。体全体のリズムが崩れるとともに、水分吸収がうまくいっていないのです。

 「女はためる。男はくだる」とは現代人の生活状況を表す表現でしょうが、これは生活習慣病そのものなのです。今すぐ改善しなければとんでもないことになってしまいますよ。

<べんのお国柄 便秘解消レシピ>

辨野義己先生プロフィール

独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。酪農学園大学獣医学科卒、東京農工大学大学院を経て2004年から現職。35年以上にわたって腸内細菌学・微生物分類学の研究に取り組んでいる。

おもな著書として、「ウンコミュニケーションBOOK」(ぱる出版)、「ヨーグルト生活で「腸キレイ」」(毎日新聞社) 「ビフィズス菌パワーで改善する花粉症」(講談社)、「べんのお便り」(幻冬舎)、「病気にならない生き方で、なる病気」(ブックマン社)などがある。