大腸がん検診のポイント 便秘の場合はどうする?病院の選び方は?
EAファーマ株式会社 みなさんは大腸がん検診を受けていますか?
日本ではがんで亡くなる方のうち、大腸がんによる死亡数が第1位*1です。非常に多くの方が命を落としている一方で、大腸がん検診の受診率は45.9%(2022年)*2で、半数に満たない状況です。
大腸内視鏡や大腸がん検診の専門医である、松田尚久先生(東邦大学医療センター大森病院消化器センター内科 教授/センター長)に大腸がん検診を受けるべき理由や、便秘でも心配せずに検診を受けるポイントをお聞きしました。(聞き手:NPO法人日本トイレ研究所代表理事・加藤篤)
2025年11月9日(日)、EAファーマ株式会社と日本トイレ研究所は大腸がん検診についての
オンラインイベント「明日検診に行きたくなる!大腸がん早期発見の大切さを考える会」
を開催しました。
大腸がん検診はどうやって受ける?
――大腸がん検診の受診率が低いことが課題になっています。まず、検診はどのようなものなのでしょうか?
松田先生: 大腸がんは原発臓器に限局しているものだと早期に発見・治療で97%以上の患者さんは予後が良好(5年相対生存率)と言われている疾患*3ですので、「検診を受ける」という最初の一歩が命を守るカギになります。
大腸がん検診の方法として国が推奨しているのは、便潜血検査(便のなかに血が混じっているかどうかを調べる検査)となります。自治体(市区町村)が住民向けに実施している検診や、職場の検診で大腸がん検診を受けることができます。
便潜血検査が陽性になった場合は、精密検査として保険診療で大腸内視鏡検査を受けることができます。このほか、急に便秘になった、便秘と下痢を繰り返す等の自覚症状がある場合は、大腸内視鏡検査を受けることを医師からすすめる場合があります。
大腸がん検診にまつわる誤解
――便潜血検査が「面倒」「提出するのが恥ずかしい」とよく聞きます。検査で何をチェックしているのでしょうか?
松田先生: 便潜血検査は、最も手軽にできる大腸がん検診です。専用のキットで便の表面をこすって提出するだけですが、これで大腸にポリープやがんがある可能性を見つけることができます。確かに採便には少し抵抗を感じる方も多いですが、数分の手間で命を守れる検査だと考えてほしいですね。
この検査のポイントは「見えない出血」を拾い上げることです。大腸の表面にポリープやがんがあると、肉眼ではわからないほど微量の出血が起こることがあります。
上手に採便するコツは?
――便潜血検査で上手に採便するコツはありますか?
松田先生: 大腸から出血がある場合は便の表面に血液が付着しますので、便の表面をスティックの溝が埋まる程度に軽くこすり、異なる部分を数か所採取してください。便にスティックを突き刺すのではなく、表面をこするのがコツです。
採便用のシートを便器に敷いていても、水の中に便が落ちてしまったということをよく聞きます。水の中に落ちてしまった便は、正確な検査ができませんので、別の機会に採便するようにしましょう。便座と便器の間に新聞紙などを挟み、新聞紙で便を受け止めて採便するという方法もあります。
便秘などで採便がしにくい時はどうすればよい?
――便秘で排便回数が少なかったり、硬い便になってしまう場合によい方法はありますか?
松田先生: 日本の検査では2日分の便を検査しますが、2日連続で排便が出ないという方もいると思います。採便してから提出まで日数が経ちすぎないほうがよいですが、真夏でなければ、5日くらいまでは暗所で保管しても構わないでしょう。
便がカチカチで表面がこすりとれない時は、霧吹きで少し水を吹きかけて採便しても構いません。この程度の水分なら血液が洗い流されることはありません。
また、下剤を飲んで出した便でも問題ありません。ただし、下痢便は避けてください。
――便潜血検査をしても、大腸がんが見つからない場合はあるのでしょうか?
松田先生: あります。便潜血検査はあくまでスクリーニング検査で、すべてのがんを見つけられるわけではありません。例えば、出血を伴わない初期の大腸がんは陰性となることもあります。そのため1回だけ受けて「陰性だから大丈夫」と思わずに、年に1回のペースで継続して受けることが重要です。毎年受け続けることで発見の確率は格段に上がりますので、便潜血検査を受ける意味は大きいといえます。しかも、便潜血検査は非侵襲的な検査ですので、安全かつ合理的です。
大腸内視鏡検査でポリープ切除もできる
――便潜血検査で陽性になっても「がんが見つかるのが怖い」「手術や治療は嫌だ」と大腸内視鏡検査を受けない人もいます。どう考えればよいでしょうか?
松田先生: 残念ながら、便潜血検査が陽性になっても、大腸内視鏡検査を受けるのは約7割*4というのが現状です。不安な気持ちはわかりますが、大腸がんは早期の発見・治療によって治る確率が非常に高いがんです。
検査を受けるメリットとして、ポリープが見つかればその場で切除してもらうことができます。検査と予防処置を同時にできるのです。ポリープの中にはがんに変化するものがありますから、切除することが将来の大腸がんの予防にもなります。これは胃がんや乳がんなど、他のがん検査と違う大きな特長です。
怖いからこそ、早く見つけることが一番の安心につながると考えてみてはどうでしょうか。便潜血が陽性になったら、必ず大腸内視鏡検査を受けてください。
――「痔だから血が混じったのだろう」と考えて大腸内視鏡検査を受けない人もいます。
松田先生: 確かに痔で便に血が混じることはありますが、痔と大腸がんが同時に存在するケースもあります。もう一度、便潜血検査を受けるというのは正しい方法ではありません。便潜血で陽性になったら、放置せずに必ず大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。
病院の選び方、3つのポイントとは?
――大腸内視鏡検査を受ける病院は、どう選べばよいでしょうか?
松田先生: 確認するポイントは、①拡大内視鏡を使っているか、②麻酔の使用が可能か、③ポリープが見つかったら切除してもらえるかの3点です。
拡大内視鏡は、発見したポリープががんかどうか判断するための精度が高いことが確認されています。麻酔は、検査の痛みが不安だという方も多いと思いますので、麻酔の使用を選択できることが安心につながります。ポリープ切除は、検査と切除を同時にしてもらえると患者さんの負担が少なくすみます。1㎝程度までのポリープを切除できる病院であれば問題ないと思います。
大腸内視鏡検査を受ける流れ
――大腸内視鏡検査を受ける際の、手順を教えてください
松田先生: 便潜血検査で陽性となったら、まず大腸内視鏡検査の予約をとります。受診するのは消化器内科や消化器内視鏡科などです。
次に、病院で飲んでいる薬や体調などの確認のため問診などを行います。この際に、検査食や検査当日に腸をからっぽにするための前処置として服用する下剤などを処方される場合もあります(検査食の有無は病院によって異なります。また、病院で下剤を服用する場合もあります)。
当日は検査の4~6時間前から下剤を服用して、腸内がからっぽになったら検査を行います。麻酔を使用した場合、当日は車の運転ができないため、事前に確認するようにしましょう。
便秘の方は事前に相談を
――便秘なので下剤で腸をからっぽにするのが大変、と心配する方もいます。
松田先生: 便秘の方は、事前の問診でぜひ相談してみてください。慢性便秘症と診断されたら、検査の数日前から浸透圧性の下剤(検査の前処置の下剤とは異なる種類)を服用したほうがよい場合もあります。
――検査食が出ない場合、食事で気をつけることはありますか?
松田先生: 食物繊維の少ない、消化しやすい食事を心がけてください。キノコ・海藻や、キウイの種などは消化されにくく腸内に残っていることが多いので避けていただきたいですね。
排便で気になる症状があれば受診を
――便潜血検査で陽性になったとき以外でも、大腸内視鏡検査を受けた方がよい場合はありますか?
松田先生: 急に便秘になったなど排便習慣が変わった、便が細くなった、便秘や下痢を繰り返す、血便、残便感があるなどの症状が続く場合は要注意です*5。これらは大腸がんやポリープによる症状の可能性があるため、迷わず受診してください。
――大腸内視鏡検査は何歳から受けるべきでしょうか?
松田先生: 一般的には50歳を超える頃からポリープができやすくなり、リスクが高まりますので、一度は受けてほしいと思います。ただし40代でも大腸がんになる方は一定数いらっしゃいますので、機会があれば受けることをおすすめします。家族に大腸がんの既往がある方や、炎症性腸疾患などを持つ方は、早くから医師と相談し、適切なタイミングで受けることが望ましいです。
――最後にメッセージをお願いします。
松田先生: 大腸がんは日本で最も多くの人がかかるがんであり、死亡原因でも上位に入ります*1。しかし、便潜血検査や大腸内視鏡検査を適切に受けることで、早期に発見・治療ができる可能性が高い病気です*6。まずは便潜血検査を年に1回受けるようにしましょう。
(2025年9月8日、EAファーマ株式会社本社にて取材)
*1国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス「大腸」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html(閲覧年月:2025年9月)
*2国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening/screening.html(閲覧年月:2025年9月)
*3国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html(閲覧年月:2025年9月)
*4厚生労働省「第4期がん対策推進基本計画に対するがん検診のあり方に関する検討会からの提言の参考資料集」
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000991052.pdf(閲覧年月:2025年9月)
*5国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院「大腸がんの症状について」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/150/index.html(閲覧年月:2025年9月)
*6国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス「大腸がん検診について」https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html(閲覧年月:2025年9月)


