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便秘は、何歳からなるの?

講演内容
友政 剛先生
パルこどもクリニック院長・
小児科医

便の回数が週に3回未満であったり、便を出しにくい状態、あるいは、出すときに肛門が切れて痛かったり、出血するというような状態は便秘です。これらは全て治療の対象です。便秘には種類があり、一時的な便秘の一過性便秘症と、1、2ヶ月以上たっている慢性便秘症とに分けることができます。一過性便秘症は大体において原因があり、特に重要視されるのは脱水です。寝汗のひどい赤ちゃんは、うんちがかたくなります。夜クーラーをつけるだけでよくなる場合もあります。また、食べる量が少ないと、便になるのに時間がかかり、その間に水分が吸収され、便がかたくなります。年長児であれば、旅行などのストレスで一時的に便秘になることもあります。一方、慢性便秘症は、生まれつきの体質や、あるいは生活や食習慣に負うもので、ほとんどの場合、明らかな原因は見つかりません。

1歳半までの赤ちゃんの便秘で、一番気をつけることは、生まれつきの病気がないかということです。赤ちゃんの便秘は基本的には頻度が低いのですが、生まれつきに腸の病気などがあれば問題になりますので、繰り返して浣腸を必要とする場合には、必ず一度は医師の診断を受ける必要があります。治療については、肛門刺激が一番ポピュラーで、綿棒など少し滑りをよくして、肛門をつつきます。これは非常によく効く子もいますし、全く効かないという子もいます。

水分を補給するということに関しては、夏だからといって特別に足す必要はなく、普通にミルクで大丈夫です。脱水しない事は大切ですが、便秘の赤ちゃんにただ水分を飲ませても、少しも便がやわらかくならないことは学問的にも確かめられています。

糖水も、赤ちゃんの便秘としては使われることがあります。量の問題、その他の調節は、医者の指導のもとにやっていただくのがいいです。ヨーグルトは、腸内細菌に影響して便通をよくする場合があり、実際1日20CC、30CCと毎日食べさせると、便通がよくなる子もいますが、効果がない子もいます。

18カ月から学校に入るまでの幼児の便秘で一番大切なことは、便秘の悪循環という概念です。便がかたくなると、出すときに痛い思いをし、子どもにとっては恐怖体験になります。これを繰り返し経験すると、うんちを我慢するようになります。乳児期に便秘が発症して、2、3歳で我慢癖がつき、学童期には便秘が完成してしまう状態になるので、1歳から3、4歳ぐらいまでの間に適切な治療をすることが大切です。

治療上のポイントは便秘の悪循環を断ち切ることです。便秘症そのものは、生まれ持ったものである可能性が高いので、直腸をいつも空にして、いつも肛門が痛くならないように、便をやわらかく保ち続けてあげることが最も大切なのです。

講師プロフィール

東京都出身。

昭和54年、群馬大学卒業、米国Harbor-UCLA Medical Center、Assistant Professor、群馬大学小児科講師などを経て、平成15年、群馬県伊勢崎市にパルこどもクリニックを開業、以降、日々の診療のかたわら、小児の消化器病を中心に研究・学術活動を行っている。専門は、小児消化器病、とくに炎症性腸疾患と、消化管運動。日本小児栄養消化器肝臓学会学術委員、ガイドライン委員会委員長、群馬県小児科医会学術委員長。平成25年、小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインの作成委員長を務めた。