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第4回日本トイレひと大賞

日本のトイレ環境はここ数十年で飛躍的に改善されましたが、
当研究所が実施した『トイレの困りごと調査』では、障がい者や高齢者、外国人、LGBTを含む方から、2141件もの「困りごと」の声が寄せられ、
改善すべきことがまだまだ沢山あることがわかりました。
トイレをつくるのも、使うのも、維持するのも、みな「ひと」です。

そこで、日本トイレ研究所は「日本トイレひと大賞」を設け、トイレ環境や排泄をとおして社会が抱えている課題に取り組む「ひと」を表彰します。
「ひと」に光をあてることで、トイレ・排泄の改善に取り組む思いを共有し、「トイレ・排泄」に対する意識を高めていくことが「日本トイレひと大賞」のねらいです。

4回目となる日本トイレひと大賞は2つの個人、6つの団体が選ばれました。
選考にあたり、有識者(日本トイレ研究所の顧問・理事・アドバイザー・トイレ向上委員)からなる選考委員会を開催し、選考いたしました。

第4回「日本トイレひと大賞」受賞者一覧

グランプリ「小学校に洋式トイレプレゼント!全国 47 都道府県累計120 校への寄贈達成」
小林製薬株式会社


背景:家庭や商業施設のトイレ環境の改善が進むなか、学校のトイレは築数十年の古いものが多く、「汚い」「臭い」「暗い」などの悩みを抱えていて、その多くが清掃だけでは解決できない問題となっています。小林製薬が実施する「小学校に洋式トイレプレゼント!」はトイレを快適な空間へと変え、少しでもこどもたちにとって用便しやすい環境を整えています。私たちは、この活動を通じて明日を担うこどもたちに笑顔を届けたいと考えています。

期間:2010 年~
結果:全国 47 都道府県 累計 120 校への寄贈 (2019 年度)

1) 洋式トイレをお届け : 男女各1 か所の和式便器を洋式便器に変更します。
2)床面の臭気対策 : 臭気・イメージ対策として、トイレ全体の床面に防臭シートを貼ります。
3)足型シール貼付 : 正しい位置で用を足せるように、足型シールを貼付します。
  また、トイレを正しく使ってもらうためのマナーアップシールも貼付します。
4)寄贈式・特別授業 : 寄贈式を行った学校では、特別授業も実施。排便の大切さ、我慢しないことの重要性を楽しく学びます。

準グランプリ「外出時にトイレで困らないまちに向けて」
旭区トイレ美化委員会


私達は大阪市旭区で『外出時にトイレで困らないまちに向けて』活動しています。2017 年2月より同地区の公衆トイ
レを中心に地域住民で不定期に清掃活動を実施してきました。現在はトイレの啓発活動に力を入れています。活動内容としてトイレを題材にしたゲームを作製。2017年8月から2019年8月の間に地域の祭り、公の催しでゲームを実施。ゲームの実施回数は延べ3845 回に達しました。参加者にはトイレを綺麗に利用する事を訴える啓発チラシの配布を行っています。
また、トイレを綺麗に使う事を意図した紙芝居やまちのトイレを舞台にした謎解きゲームなどのイベントを開催。トイレの啓発活動の中で繋がった方々に協力して頂き、旭区緊急トイレMAPを作成してきました。活動地域の変化として千林商店街の紙媒体のオフィシャルマップにトイレの位置情報が記載され、デジタルマップにもトイレ位置情報が掲載されました。2018年12 月には、直接的に関わった訳ではありませんが、旭区トイレ美化委員会の活動地域である大阪市環境局が管轄する千林町公衆トイレが改修されました。
トイレの美化活動を通して、自分たちが楽しむための居場所をつくり、地域の他団体と繋がりながら、アイデアで地域のトイレ課題と楽しく向き合っています。

「避難所における多目的トイレ調査」
特定非営利活動法人 アクセシブルラボ


2016 年に発生した熊本地震によって、車いす利用者(障害者)や介護を必要とする高齢者が、自身の障害等に適したトイレ設備のある『福祉避難所』を発見できず、避難難民(一時的に車や半壊した自宅で過ごしていた)になっていたという報道を見て、当法人が所在する栃木県宇都宮市内で、多目的トイレが設置されている避難所100 箇所を調査しました。 車いすユーザー4 名で各所を調査。手すりの高さや位置、扉の幅などを計測、数値化し、画像も含めた詳細な情報をデータベース化しました。そのデータを宇都宮市に寄贈し、市の公式ホームページに掲載して頂きました。
これにより災害弱者が、事前に家族で避難計画を立てられるようになり、みんなで防災意識を高める一つのきっかけに繋がりました。
今後は、このノウハウを活かし、他の自治体での調査にも力を入れ、防災に強い街づくりに貢献していきたいです。

「北海道胆振東部地震の体験からトイレの大切さを伝える~快適トイレの普及活動」
ウォレットジャパン株式会社


北海道胆振東部地震では自身が被災者となり初めてトイレが使えない現実に直面し、改めて自身での備蓄(自助)の大切さを感じました。被災経験をもとに災害時のトイレの大切さを伝えていく為、防災訓練への参加も積極的に行ない、トイレに関してのプログラムが組み込まれていない際には防災担当者へ提案させていただき、携帯トイレの使い方、災害トイレの種類、備蓄推進を促す活動を進めてきました。
現在、北海道内179 市町村を対象に防災備蓄状況の確認、迅速な要請が出来るシステム、防災訓練に「トイレ訓練」が組み込まれているかの有無を調査中(30 /129)。災害時のトイレの大切さを風化させる事無く伝えていく為にも、過去の震災でのトイレ環境の実態等も伝えていき自助の啓発活動を継続していきます。
また屋外仮設トイレの環境改善の為、様々な施設・イベント・防災訓練・被災地支援などで快適トイレ(コンテナ型トイレ)の普及活動にも取り組んできました。既存の仮設トイレはもともと建設現場向けに開発されたトイレで、イベントや避難所でも併用されます。そしてその大半は委託業者に運搬を任せ設置したら終わりという流れが実情でした。イベントや避難所では老若男女様々な方が使用します。依頼した担当者も含め「数を揃えたら大丈夫だろう!」では屋外仮設トイレ環境は一向に改善されないと知り、自社のトイレを設置する際は必ず現場に足を運び、利用者のリアルな声を聞き、すぐできる問題は即時対応する事でより良い環境を構築するようにしてきました。
快適トイレの普及=イベントでの集客率向上=避難所トイレの質の向上に繋げていくよう今後も普及活動を継続していきます。

「「笑顔で“うんち・おしっこ” の話ができるリハビリ施設です!」」
片桐 美枝


超高齢社会の現在では様々な問題が課題となっていますが、高齢者の殆どの方が何かしら排泄の不安を抱え、想像以上に生活に影響を及ぼしていることを日々感じて仕事をしていました。 少しずつではありますが、今では利用者様にとって恥ずかしがることなく相談できる場となり、おひとりおひとりにあった排泄の解決方法を提案できるリハビリ施設になっています。
例えば、便秘で悩んでいる高齢者の殆どが下剤を内服していますが「出なくて苦しむよりは、シャーシャ―のうんちの方がマシ」と言われます。こうした高齢者は動作が遅く水様便のためにトイレに間に合わず失敗し、とてもつらい思いをします。 ただ、ご本人だけではなく着衣の洗濯やトイレ掃除に明け暮れるご家族の悩みも計り知れないものがあります。 こうしたデリケートだけれど毎日の生活をより良くするために “うんちやおしっこ” の話を笑いながら普通に話せる環境づくりに取り組み、相談・アドバイスができるように工夫しています。 リハビリ専門員としては、排泄日誌を書いてもらって生活習慣の指導をするほか、体操のなかに骨盤底筋の運動を取り入れるなど身体機能と生活面から積極的に排泄リハビリに取り組んでいます。

「熊本地震の経験を活かしたマンホールトイレの普及啓発」
熊本市上下水道局


熊本地震の経験を活かしたマンホールトイレの普及啓発
熊本市では、平成28年4月、2度の震度7クラスの大地震により、市内全域で断水し開設された多くの避難所でトイ
レ用水の供給が絶たれました。そのような中、マンホールトイレの整備が完了していた4つの中学校では、本震翌日に
は職員が設置、利用者からは非常に好評でした。
しかし、今後の課題が明らかになりました。マンホールトイレを整備して間もなかったため、知らない人が多く、利用ルールが徹底するまでは運営に苦慮したこと、また、今後整備を進めていくものの、設置運営に対応できる職員が限られていることでした。そこで、マンホールトイレの設置運営は避難所運営協議会に担っていただくこととし、知ってもらうために普及啓発に力を入れることにしました。具体的には、整備が完了した学校や地域の防災イベント等に赴き、運営方法やマンホール蓋の開閉方法の講習を実施するなど、これまで約2000 人の方々に理解してもらいました。令和になってからは、小学校や町内の運動会で実際に使ってもらって知ってもらう実践型の普及啓発も取り入れています。
本市では、これからも有事の際に抵抗なく使ってもらえるよう、マンホールトイレの普及啓発に取り組んでまいります。

「非常用トイレは個室に備蓄」
中央大学杉並高等学校


「誰も失わない学校作り」これが本校が掲げる防災スローガンです。命を守るためには、正確な知識を一人ひとりが持つことが重要です。防災教育を学校教育としてしっかりと行うことが、社会の防災力を高める近道だと考えています。
そんな中2019 年度春期防災訓練では、災害時のトイレについて全校で考えてみました。「校内にトイレはいくつ?」「個室は?」「災害時はトイレ流せなくなるよ、どうするんだっけ?」などと問いかけつつ、災害時のトイレの使い方をおさらいしました。教室では凝固剤を使った実験を行い、各家庭に携帯トイレの備蓄が必要であることを再確認しました。
それに伴い、納品されたまま段ボール箱に入っていた携帯トイレの備蓄方法を改めました。凝固剤やビニール袋・ゴム手袋・ウェットティッシュ・使用禁止の貼り紙などを手提げ袋に入れてトイレの個室ごとに置くことにしたのです。そして備蓄内容と使用方法を記したプリントをトイレのドアに張り出しました。これで携帯トイレが日常的に目にするものになったのです。おそらく発災時の「トイレ対応班」の労力が激減したはずです。お金をかけずに少しだけ工夫してみました。
今後、学校の携帯トイレ備蓄方法としてこの方法を他校にも勧めていこうと考えています。

「『次世代の汲み取り業務の確立に向けて』~怒りや悲しみを誇りに。そして、次のステージへ誇りのすべてを光に~」
前田 真


私の職場は、大阪府東大阪市全域の一般家庭し尿収集及び工事現場などで使用された仮設トイレ等の臨時収集、公園や街路樹などの剪定を担う公益財団法人です。私は、し尿収集運搬処理業務、通称「くみとり」業務に従事しております。
近年、都市部を中心に水洗トイレの普及率は9割を越える自治体が大半であり、汲み取り式のトイレはわずか1割程度です。それに伴い、バキューム車の数や作業員も年々減少しております。人口規模の大きな都市部ほど水洗トイレが普及していますので、仮に、地震などによって水洗トイレが使用不可となり、緊急に「くみとり」が必要になった際、人も車両も不足することは明らかです。
平時より、事業所における災害対応(BCP 及び D -TOP 作成等)の準備は最低条件であり、災害時においても円滑に連携できるよう関係者協議を定期的に行い、市民の皆様への具体的な啓発活動(災害トイレの備蓄・トイレにごみを入れない・仮設トイレの便槽空きスペースの活用方法など)に取り組むこと。人も車も少ないからこそ、「災害が起きる前にどれだけ準備するか。」が非常に重要になります。
そのためには、先ずは、現場が災害時のトイレ問題を十分に理解し、動き出すことが大切です。

これまでの受賞者紹介

第2回日本トイレひと大賞グランプリ                谷口智海 東京大学理科2類

本年第4回となる「日本トイレひと大賞」は2016年より表彰を行ってまいりました。
受賞された皆様に「日本トイレひと大賞を受賞して」と題してご執筆いただきましたので、ここにご紹介します。


——現在の活動状況をお聞かせください

 大学の勉強のかたわら,様々な災害(地震,水害,火山災害など)におけるトイレ問題の事例研究を主に行っています。日本トイレひと大賞を受賞した高校生のときは発表活動が中心でしたが,現在は災害時のトイレ問題だけではなく,トイレにまつわる文化や歴史,宗教との関係,海外のトイレ事情などを含めてトイレに関する様々なことをインプットすることに重きを置いています。アウトプットとしては身近なトイレのことを本当の意味で身近な存在にできるよう,自分の周囲の人に認知してもらうようにしています。その一環として大学の授業の中でトイレに関する広告やポスターやLGBTにまつわるトイレ問題をテーマにしたプレゼンテーションを行いました。教授だけでなく,ともに学ぶ学生にもトイレを身近に感じてもらう良い機会にできたと思います。


——日本トイレひと大賞を受賞してよかったことや、変化したことについてお聞かせください

 日本トイレひと大賞受賞前から周囲の人に「トイレのひと」のような感じで認識されてはいましたが,グランプリを受賞した後,高校で表彰を受けたり,地元紙(南日本新聞)にとりあげていただいたりしました。それらを通じて,より多くの人にトイレの重要性やトイレ問題について知ってもらう機会が増えたことは良かったことだと思います。また,授賞式を通じて,トイレに向き合う方々と知り合い,お話できたことで,視野が広がりました。また,大学入学後の新しい人間関係の中で,「日本トイレひと大賞グランプリ」というインパクトから,トイレを話題にするきっかけにもなっています。


——今の目標をお聞かせください

 今は広く深く学び,将来を見つめることを大切にしています。職業としてどのように関わるかは決めていませんが,将来はトイレに関わることをしたいと考えており,近い将来として,大学卒業後は,大学院で公衆衛生学を学びたいです。また,高校時代から続けていることではありますが,トイレの重要性を広めていくために,まずは周囲の人からトイレに意識をむけてもらうことは,常に目標としています




プロフィール
鹿児島県立甲南高等学校を卒業し、東京大学に在学中。
高校時代に日本の災害時におけるトイレ問題の課題研究を行い、それに伴う発表活動などで、高校3年次に第2回日本トイレひと大賞グランプリを受賞。以来、トイレに関する様々なことに関心を寄せている。

第1回日本トイレひと大賞グランプリ                川嶌美穂 武蔵野市立第四小学校

——現在の活動状況をお聞かせください

 「私の名前はブリリン!トイレヨーデル星から来たの。一緒にうんちの勉強をしましょうね。」
 ブリリンに変身し、毎年小学校1年生を対象に「うんち教室」を実施し早9年。これまでに区部、市部、島しょ部の小学校に勤務し、その時の児童の人数や様子、健康課題に合わせて内容を変えてきました。
2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。東京都教育委員会ではその取組の1つとして、「世界ともだちプロジェクト」という活動を行っています。「世界ともだちプロジェクト」とは、東京2020大会参加予定国や地域について幅広く学び、交流などに発展させる取組です。本校でも6つの国が対象となっています。うんち教室ではそのうちのいくつかの国のトイレ事情について取り上げています。日本のトイレが普通だと思っている子供たち。しかし、国によっては自動で水が流れなかったり、公衆トイレが有料だったり様々です。少しでもトイレを通じて世界の国々に興味を持つきっかけになってくれたらいいな、と思い活動を続けています。


——日本トイレひと大賞を受賞してよかったことや、変化したことについてお聞かせください

やはり、「うんちに詳しい養護教諭」から「日本トイレひと大賞を取ったうんちに詳しい養護教諭」になり、活動に説得力が増したように感じています。今までは自分から1年生の担任の先生に「うんち教室、やってもいいですか」とお願いしていたのが、「今年もうんち教室やってくれますか。楽しみです。」と言われるようになりました。
しかし、子供たちにはうんち教室は「川嶌先生のいとこのトイレヨーデル星から来たブリリン」がやっていることになっているので、あまり公にできないことが残念です(笑)


——今の目標をお聞かせください

 ずばり「トイレから健康の歯車を回す!」ことです。
小学校三年生の保健の授業では、「健康の保持増進のためには、運動・食事・休養及び睡眠をとることが必要」ということを学習します。これは子供たちが小さい頃から言われている「当たり前のこと」「知っていること」でもあります。しかし、実際にそれができているか、となると別問題です。やってみようという思いに至るまでには、「やってみたら、元気が出た。体がスッキリした」という経験が大切です。健康な生活は、まずは何か1つを習慣にすることが必要です。習慣にすることで、健康の歯車がはまっていき、回るようになります。排便はその歯車の1つに当てはまります。今は1年生を対象にしていますが、それを様々な形で全学年にひろげることができたらいいな、と思います。
また「災害時のトイレ」についても取り組んでいきたいと考えています。東日本大震災が起こった時、私は最大震度6弱を記録した千葉県成田市の小学校で勤務していました。すぐに学校が避難所となり、地域の住民が体育館に集まってきました。当然トイレに行く人も多くいます。しかし、成田市は断水となり、トイレが流れなかったのです。すぐにトイレには排泄物が溜まりました。ただでさえ余震が続き混乱した状況で、トイレにも行けないというのは、精神的にも肉体的にも追い詰められていきます。幸いすぐに復旧しましたが、あの時の経験は忘れることができません。低学年ではうんちについて学習しますが、高学年では他教科でもそのことを生かした学習を広げていけたらいいな、と思います。


——ほかに何かあれば自由にお書きください

 トイレや排便は生きていく上で、ずっと付き合っていくものです。少しでもポジティブなイメージになるように、小学校低学年から広めていきたいと思います。今後も子供たちの健康を保持増進するために、恥ずかしがらず保健室でうんちの話ができるように、活動を続けていきます。


プロフィール
東京都公立学校養護教諭。区部、島しょ部、市部など色々な地域での勤務を経験。
「うんちは体からのメッセージ」を合言葉に、排便やトイレの使い方の指導を行ったり、「うんちっち!のうた」をみんなで楽しく踊ったり……。頭と体を動かす「うんち教室」を実施している。