ト イレ協会会員の山本です。私の個人的な力量不足で長らく更新できずにいましたが、少しずつフィリピンでのお話を再開させて頂ければと思います。話は前回 11月に投稿致しました「バイオガス事例:Benguet,Philippines No.2」の続きNo.3として書かせて頂きたいと思います。
昨 年私は、滞在するバギオ市周辺のベンゲット州において3カ所のバイオガス利用者宅を訪ねました。そしてその内2カ所(前回までにお話ししたNo.1,2) はビニールチューブを使った装置でしたが、今回お話しする3カ所目の場所はコンクリートを使った物でした。そして何と言っても前回までの2カ所と違う点 は、
「人間の排泄物をバイオガスの為に使用していた」という点です。残念ながら今は使っていない(人間のトイレとバイオガス・システムを繋げていない)とのことですがそれはなぜか。後ほど記述させて頂きますが、まずは現在の写真をご覧下さい。

道沿い左側の石垣になっているところの家です。ちょうど日が昇っている真下が家の敷地です。

分 かりづらいですが、遠目からの視点です。中心の丘になっている部分(奥の山でなくその手前の丘)の左、白くなっているところが家です。一つカーブを戻って 約200~300mくらい離れたところから撮っています。やはりこちらも標高1400m前後くらいの高地に位置します。

利用者宅の全体写真です。手前に豚小屋、奥が敷地の入口で左には道路が見えます。分かりにくいですが、右手前に人がいるところから右奥に並んでいるのがこちらの家族の家々で、そのひとつの母屋にガスを使うキッチンがあり、繋がっています。

これが豚小屋です。今は5~10頭前後飼っているそうです。

写 真下の溝が豚のし尿を流し込む入口(Inlet)、でその先の地面にバイオガス・システム本体(Plastic Digester)があります。この排水溝は豚小屋の床から直接来ていて、豚が小屋にした糞を床掃除ついでに水でそのまま流せる(流す)ということになっ ています。

出口(Outlet)はこのちょうど先、道路とこの家の敷地の間の小さな崖に作ってあります

これが出口(Outlet)です。写真上部には道路が見えます。

そしてこの左の家がバイオガスが使われている母屋です。地面にパイプが見えますでしょうか。これが地面下の本体からキッチンに向かって伸びているパイプです。

キッチンです。パイプが壁の上部を伝わりキッチンへ伸びています。


実際に火をつけて頂きました。弱いようですが使えるそうです。
●ビニールチューブではないスタイル
こちらの装置本体は、ビニールチューブでない、レンガを積み上げコンクリートで固めた本体でした。高さは約5ft(約1m52cm)で幅が約12ft(約 3m66cm)。ベンゲット州立大学のエンジニアとインド人留学生が紹介してくれたシステムで、「インドで使われているシステムで、 『Dingdangban Style- Indian style』だ。」とのこと(Dingdangbanは人の名前と思われる)。
本体の形は楕円ではなくボールの様に球状に近いようです。そして本体上部には中をかき混ぜるためのパドルが差し込んでありそれを回して混ぜる、とのことでしたが、どこにそんな物があるのか分かりませんでした(→また時間があるときに確認しに行こうと思っています)。
●ガスが余剰に出た
こちらのお宅のバイオガスは97年に作り、導入当初は10~15頭前後の豚を飼育して使用していたそうですが、今では5~10頭程度に減らしたそうです。 というのも、理由は「ガスが出過ぎた」とのこと。こちらの家庭では使いきれない程のガスが発生し、ガスを使用しない時間帯でもずっと出さなければならない 状態が続いたそう。何とも贅沢な話ですが、それで豚の数を減らす手段を選んだそうです。そして減らした今では、適量を朝昼夜3食分の調理に使用していると のこと(それでも多い日には入口(Inlet)を閉じるとのこと)。
気になる事があります。前回までの2事例と比べて対照的なのがこのことなの です。同じ標高1400m前後にある高地であるにもかかわらず、前2事例の家庭では「朝しか利用できない分しかガスは発生しない。」と言っているのに対し て、「ガスが発生し過ぎてどうしようもなかった。」と言うのでしょうか。豚の数はそれほど変わりません。ビニールチュブとレンガで作られたシステムの違い でしょうか。。。
●人間のし尿利用をどうしてやめたか


人間のトイレ。家とは独立して家の前に広がる庭(というより日本的に言うならただの敷地)にあります。この左地下にバイオガスの本体があります。
実は昔、このトイレをバイオガス装置につなげ、人のし尿も燃料として使っていたと言います。ですが数年で繋げるのを止めてしまったとのこと。理由は「くさかった」の一言。人のし尿を混ぜるとどのくらいくさいのでしょうか。ただ人のし尿を混ぜてもガスは発生していたようです。
●手入れ
大掛かりなメンテナンスは過去に一回しただけと言います。それ以外は特別な掃除をしていない、とのこと。その大掛かりなメンテナンスというのは、本体の中 に人が入って掃除をしたそうです。出口(Outlet)から人ひとりが入り、中のし尿を全部取り出して掃除したそうです。そのとき壊れたわけではないと思 いますので、ただ点検の為に清掃をしたという事だと思います。しかし10年以上使っていて点検がたった1回というのでも利用できてしますこのバイオガスは すごいです。もしくはちゃんと定期的に清掃や点検をした方がよいいのでしょうか。。。
●紹介、設置に関わっているのはベンゲット州立大学のエンジニア達
最 後になりますが、今回まで紹介してきた3つのバイオガスは、いずれもベンゲット州立大学のエンジニア(農学部)の人たちが教えに来て(設計から建設作業ま でを協力して)作ったそうです。聞いた話によると、装置の材料費などは自費で出しているようですが、このようなエンジニア達はおそらく無償で設置に関わっ たと思われます。当人が「バイオガスをやってみたい」という話をしていたところ、エンジニア達が協力しにきてくれた様です。
そして実は コルディレラ地方では、バイオガスを導入する際に利用する「導入の手引き」の様な物を、農業省コルディレラ支局畜産部(Department of Agriculture, Cordillera Administrative Region, Livestock Sector)が再版・配布していていました。次回はそのことについても少しお話しさせて頂ければと思います。
日本トイレ協会会員
山本勇樹