うんち研究室 - 辨野先生に聞く!(第1回)

辨野義己先生うんち研究室では、いいうんち研究所顧問に就任して頂いた腸内常在菌研究の第一人者、辨野(べんの)義己先生(独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室室長、農学博士)のお話をお届けします。
第1回・2回は、辨野先生へのインタビュー内容をご紹介いたします。第3回以降は、「べんのいい話」というテーマで、辨野先生からのうんちや健康に関するさまざまなメッセージを、月1回の頻度でご紹介します。どうぞお楽しみに!

真の健康管理とは?

 家庭での本当の意味での健康管理は、美味しいものを食べさせることだけではなく、食べて出すことまでが真の健康管理です。「うんち日記」をきっかけとして家庭の話題にできるようになることはとてもよいことです。1万人のアンケート結果では、半数の人が自分のうんちを見ているそうです。子どもだけでなく、大人にとっても出したものを見ることはいい事なのです。今や食べるものすら見ていない人もいるくらいです。うんちを観察することは健康のバロメータになります。ぜひチェックする習慣をつけるといいと思います。うんちを正しく知ることは、とても重要です。健康管理ということだけでなく、子どもの理科離れも減らすことにもつながると思いますよ。からだのしくみやうんちの作られ方を知れば、“汚いもの”という認識ではなく、自分のからだへの関心につながりますね。実際、うんちは75~80%が水分、残り20%の内、3分の1が腸内常在菌、3分の1が食べかす、3分の1がはがれた腸粘膜です。

朝ごはんを食べよう!

 子どもたちが、朝食の写真を撮ってくるという調査をされたことがありました。その場合、出来合いのものしか食べてない子や何も食べてない子も現実的にはずいぶん多かったですね。朝食を食べない子や朝食が菓子パン1個、お菓子などの子も多かったことには驚きでした。朝食をとらないと、基礎代謝量があがってこないために集中できない、朝をがんばるために、朝食は子どもにとってとても大事なんです。お昼くらいにやっと基礎代謝量があがってきても、お昼を食べると今度は眠くなる。つまり一日中集中できなくなります。昔のような朝ご飯と味噌汁という家は少なくなってしまいましたね。現代人の朝は子どもも大人も忙しいです。朝ごはんに限らず、カップラーメンやスナック菓子なども多いし、食の豊かさがないように感じます。やっぱり健康管理の上でもバランスの取れた食事は非常に大切です。

女性の美容と腸内環境

 腸内環境と皮膚は密接な関係にあることをご存知でしょうか。肌の健康を含め、若さや美しさを保つためには、腸内環境が重要だということです。そして何より男性に比べて、女性は大腸の環境が悪いんです。「がん」の死亡率を女性でみますと、乳がんや胃がんを抜いて大腸がんが1位になりました。2位胃ガン、3位乳ガンと続きます。男性は、肺、胃、肝臓が上位3つですが、女性はそれだけ大腸の環境が悪いということです。

 アメリカのがん研究財団によると、一番の原因は動物性脂肪、つまり肉の食べ過ぎと言われています。もう一つは、アルコール過剰摂取、そして3番目に運動不足となります。10年前は野菜不足と運動不足がリスクを上げるといわれていましたけど、今は少し変わりました。アルコールで誘発される「がん」は大腸がんが一番多いと言われ、アルコールの過剰摂取が大きな問題になっています。

研究室に保管されているうんちたち。 痩せている人と太っている人を調べると、腸内常在菌の構成も異なることが報告されています。2006年12月発行の科学雑誌Nature誌に載った論文ですが、遺伝的に肥満症のマウスの糞便を、無菌のマウスにつけると、総脂肪量が増えたり、太っている人にダイエット(食事制限)をさせると、痩せている人の腸内常在菌の構成に近づくというのです。つまり、腸内常在菌の中に脂肪を蓄積するものもいれば、分解するものもいるということが分かってきています。私もあるテレビ番組で体重263キロの人の腸内常在菌を調べたことがありますが、これまで見たことがないような新しい腸内常在菌が出てきました。腸内常在菌の研究はますます面白くなりますよ(左の写真は、先生の研究室に-80℃で保管されているうんちたちです)。

では、次回に続きます。

辨野先生に聞く!(第2回)>

辨野義己先生プロフィール

独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。酪農学園大学獣医学科卒、東京農工大学大学院を経て2004年から現職。35年以上にわたって腸内細菌学・微生物分類学の研究に取り組んでいる。

おもな著書として、「ウンコミュニケーションBOOK」(ぱる出版)、「ヨーグルト生活で「腸キレイ」」(毎日新聞社) 「ビフィズス菌パワーで改善する花粉症」(講談社)、「べんのお便り」(幻冬舎)、「病気にならない生き方で、なる病気」(ブックマン社)などがある。