家庭紙の魅力と歴史

関野勉先生

今回は、トイレットペーパーを知り尽くした方、家庭紙史研究家の関野勉さんにインタビューいたしました。家庭紙の歴史、魅力、未来まで、さまざまな視点で語って頂きました。普段何気なく使っているトイレットペーパーのことを、じっくり考えてみてはいかがでしょうか?




家庭紙の紹介

1973年のオイルショックの時、トイレットペーパーが買い占められ、店頭から姿を消したことを記憶されている方も多いと思います。当時、私は製紙会社に勤めており、当社にはクレームと同時に、トイレットペーパーに関する様々な問い合わせがありました。そのとき、トイレットペーパーがいつごろ製造されはじめたのかなどといった質問があったのですが、私は答えられませんでした。私は製紙会社で働きながらも、実はトイレットペーパーの歴史などについて何も知らないことに気付いたのです。それ以来、私はトイレットペーパーを含めた家庭紙について調査研究を始めました。
家庭紙という言い方は、日本独特の言い方だと思います。紙は、大きく分けると3つに分類することができます。ティッシュというのは「薄い」という意味ですが、そのような薄い紙と板紙のような厚い紙と印刷用紙の3種類です。印刷用紙の中に、印刷適正の問題があって、アート紙やコピー用紙、表紙などに使用する紙もあります。薄い紙の中のティッシュやトイレットペーパー、のし紙、障子紙など、家庭で使う紙を家庭紙と言います。

紙の魅力

私が紙の中で、特に魅力を感じるのは、手すき和紙です。和紙は原料やすき方によって全く違うものができますし、1000年でもきれいに保存できるところがすごいところだと思います。洋紙は、日本で使い始めてから150年くらいしか経っていないので、きちんと保存できるものかどうかわかりません。しかし、国会図書館に保管されている明治38年頃の洋紙で作成された出版物を見ると既にボロボロですので、和紙のようにきれいには保存できないと思います。一方、手すき和紙は宮内庁や正倉院のものをみると、1200年~1300年前のものもきれいに保存されています。また、インクではなく、墨も長期間の保存に適していると思います。和紙の保存で気をつけなければならないことは、和紙は米の粉を入れて作っているものもあるので、虫食いの可能性があります。その点、洋紙はほとんど虫が食べないという利点があります。

トイレットペーパーの過去と未来

中央新報より

私が初めてトイレットペーパーという言葉を知ったのは、1951年9月7日にサンフランシスコ講和条約において、吉田茂首相がトイレットペーパー演説(トイレットペーパーのように巻いて作製された巻物)ということが掲載されている新聞記事を読んだ時です。また、日本で最初にトイレットペーパーが広告に出たのは明治32年5月1日中央日報です。化粧紙という名前で出ています。メーカーか問屋かはわかりませんが名前も残っています。
日本では尻を拭く時、トイレットペーパーを使用する以前は、木ベラや葉っぱを使用していましたが、より軽くて持ち運びに便利なものとして「紙」に変化していったのだと思われます。しかし、世界に目を向けると、紙で拭かない国もたくさんあります。地元で1番安くて(もしくは無料・自然のものなど)持ち運びに適しているものが紙の代わりとなっていることが多いようです。例えば、木棒(パプアニューギニア)や雪(北欧)、コケ(ノルウェー)などで、世界で総計14種類~15種類あります。
2009年6月12日~7月13日に、私の監修で、岐阜県の美濃和紙の里会館にて「トイレットペーパー考」(たかがトイレットペーパーされどトイレットペーパー)を開催しました。そのなかで、宮内庁御用達の献上品である3個5000円の日本で最高級のトイレットペーパーも陳列されました。また、私の持っている開発当初のロール各種も展示しました。他にも、東京大学のラベルの入った製品や筒状の缶に入った色の付いた製品(6色)など最新のトイレットペーパーも展示されました。また、現在、シングルやダブルの他に、トリプル(3枚)やクアドラプル(4枚)もウォシュレット用として作られています。

トイレットペーパー考

関野先生のレポート(2)>