いまの子どもたちに必要なこと

日本人に必要な能力

イザベラ・バード(女性旅行家・紀行作家)やオギュスタン・ベルク(地理学者)という海外出身者が日本の風景を読み解きました。それは、和辻哲郎氏の「風土論」とは、別のコンセプトで日本の風景を読み解いたものです。例えば、「日本の民家は、どう評価されているか」について語るときでも、日本人はもっと自己否定ではなく、自尊感情を育み、自己肯定感を高めていくべきと思います。私たちは、海外の製品の方がいいという評価をくだしがちですが、私たち日本人は自然の恵みを大事にして暮らしや文化を積み重ねてきました。風土が持っている意味を私たちは読み取らなければなりません。イギリスでは、“sense of place”(その場所の意味)といいますが、私は、この言葉を『生きられた空間』と考えています。
ワークショップのデザイン参加型は、自分の周りの環境を変化させることができると思います。そして、これはコミュニケーション能力の向上につなげることができます。「不易と流行」という言葉がありますが、これこそ変わらない教育理念になると思います。そこを日本の教育界は捨ててきたわけです。日本は、それをもう一度、取り戻すことが必要だと思います。「根をはらないで葉や花ばかり咲かす」だけでは、木はきちんと育ちません。根があるからこそ、養分を木の全体にまわすことができるのです。根がきちんと育っていなければ、養分をまわすことはできません。
保護者の方々に伝えることとしては、「体の芯を育てましょう」ということです。それは「うんち教室」にもつながると思います。人間は食べなければ命をつなげませんし、食べたからには『うんち』として外に出さなければいけません。人間の身体は恒常性によってバランスが保たれています。地域でつくられる食材を用いるのにも身土不二という理由があります。食育という言葉は、近年、使われていますが、食育だけでなく食農教育が大事ではないでしょうか。食には安全安心が大事ですし、自給率4割を切る日本においては、環境問題や温暖化を考えると、他国の水を使用している仮想水(バーチャルウォーター、参考:http://www.env.go.jp/water/virtual_water/)という考え方も視野に入れていく必要があります。それは海外の国の環境を破壊しているも視野に入れていくということです。

子どもの意識に立って物事を考えていくべき

日本人は、表に出るカリキュラムだけを見て評価することが多いようです。例えば、子どもたちは他人の家の花壇に入って花を踏みつけることもありますよね。それを「ただやめなさい」と怒ったところで子どもの行動変容は起きません。この解決方法としては、実際に、その子どもたちに自分たちの花壇を作らせることです。そうすると、子どもたちは花を踏みつけないようになります。そういう発想の転換が必要だと思います。この考え方の基本はヒドゥンカリキュラムという考え方です。
褒めて育てるという言葉もありますが、子どもの発達は大人との信頼関係の構築が大切で、過剰な褒め方は良くないと思います。失敗したときには「失敗したけどもう一度やってみようか」と一緒にやってみたりすることが大事だと思います。褒めることと注意することのバランスが必要だと思います。例えば、テストでいい点を取ったら、お金をあげるということなどをしていると、逆に緊張感を持たせ、大人の期待に添うような枠組や基準に当てはめようとすることになってしまいます。
以前、不登校の子どもたちと親子参加型のサマーキャンプを行ったことがあります。心理学の先生が親御さんたちと一緒に屋内で勉強し、私たちが子どもたちと一緒に屋外でいろいろな体験をさせながら遊びました。親子共々とても緊張感が高く、様々な遊びとリラクゼーションなどのエクササイズを通して子どもたちは緊張が解きほぐされ自然と眠りに入った状況を目のあたりにしたことがあります。川渡りや水のかけっこ、木登りなどを行いましたが、その遊びについては、安全のための道具を用意しました。子ども達は、常に緊張状態の中で生きており、親の喜ぶ顔が見たいから、親の言うとおりに勉強し、常に気を使って生活していることが見受けられました。その子どもたちに限らず大人にも、ふわーっと緊張感が抜ける安心感をもてる状況が人間の恒常性をバランスよくしていくのではないでしょうか。
日本の家族の場合、どうしても母系社会が強いと思います。父親は外に働きに出ている場合が多いので、母子の関係が強いというのが現状です。特に、母親と息子の関係は強いと思います。それぞれ成長や発達の特性がありますが、男の子はもっと解放されるべきだと思いますが、どちらかというと、女の子の方が自分を解放していく表現力を持っているかもしれません。逆に、男の子は型にはめ込まれて生きているため、精神的にも幼く感じます。近年の大学生も型からはみ出すことにすごい抵抗を感じる人が多いのです。最初の授業でガイダンスをやるときも、必ず数人が「レポートは何枚書けばいいですか」と聞いてきます。「それを考えるのが大学生でしょう」と思うのですが、彼らは枠からはみ出すことをものすごく恐れているのだと思います。

保護者の方々へメッセージ

子どもたちに自分ひとりでは生きていけないということを認識していくプロセスが大切です。まず、子どもにとっては遊びから始まります。「あそぶ」→「まねぶ」→「まなぶ」のです。遊ぶことにより、五感は磨かれます。感性を豊かにし、自己の学力(学ぶ力)・楽力を高め、そして他者やもの・ことと関係づけていく力が育成されていくのではないでしょうか。

<小澤先生のレポート(2)

小澤 紀美子(こざわ きみこ)先生プロフィール

小澤紀美子先生

東京学芸大学名誉教授、東海大学特任教授
現在の専攻は「環境教育方法論」。現在は「子どもの居場所づくり」「住民参加とまちづくり」「持続可能な社会をめざす環境教育」を主なテーマとして研究を進めている。環境教育の方法論や実践に関する研究を進めてきているが、特に、英独米を中心に展開されている新しい環境教育のカリキュラムや実践の分析を通して、日本型環境教育や「総合的な学習の時間」のための参加型学習のワークショップなどを教師、行政、地域、専門家と協働し、授業づくりやカリキュラムの提案・普及を行ってきている。