子どもたちにとって必要な環境教育

日本の教育方法

日本の子どもたちは、基本的問題は出来ますが、応用問題、特に文章題が出来ない傾向にあります。その典型的な例が、計算の問題で平行四辺形の面積を求めることは96%の児童ができるのですが、街の地図の中の平行四辺形、正方形、長方形の公園の面積を大きさの順に並べることは18%くらいしかできていません。
また、学校で環境教育を教科として独立させるという意見もあるようですが、既に各教科にも環境教育のエッセンスは入っています。環境や福祉などの横断的な課題や学際的なアプローチが必要な主題に対しては独立した教科では対応不可能と考えます。大事なことは、考える力と探究する心です。それらによって、思考回路を活性化させたり、問題解決能力を身に付けたりすることができます。イギリスの環境教育やドイツのスタディーツアーによってそうした能力を育成する教育実践を視察してきました。ベルリンの壁が崩壊した後の東ドイツの小学校では、五感を磨くことを目的に、子どもたちのアイデアでワークショップを行い、遊び場や学びの場としての校庭を改善するデザインして、豊かな空間づくりをしていました。
一方、日本では子どもを教え諭す対象であると考えています。実際、子どもは大人の心を見抜いており、大人は子どもの力を信頼し、子どもと共に考えていくことが必要だと思います。環境に関しては、正しい解はありません。いろいろな価値観の中で、より良いものを選択し、対話を続けることで、各々が信頼し、認めていくようになると思います。

地元の風土を利用した環境教育

黒酢が地元の産物であるという鹿児島県のある小学校で、子どもたちは黒酢が産物であることを知りませんでした。黒酢の壺は、いつも通っている通学路脇の畑にありますが、それが見えていませんでした。そこで、子どもたちは探究活動を行い、よく調べ、地域の黒酢だけではなく、日本や世界の黒酢にまで学びが広がっていきます。こうした手法がまちワーク(STREETWORK)です。子どもたちは、調べ学習活動からその町の産物である黒酢が商標登録されていないという情報にまでたどり着きました。それで興味を持って「他の地域ではどうなのだろう」「海外ではどんなふうに酢が使われているのだろう」というふうに、自分たちの地元の産業がどのように成り立っているのかを学ぶことによって、考えを広げていきました。このように教育は体験型でやっていく必要があるということです。これこそ生きた教育といえると思います。だからこそ、文部科学省も学習指導要領の改訂において「言語と体験」を重視しているのです。座学よりも、体験・参加し実践することの方が身に付いたり考え付いたりする能力を向上させられると思います。環境教育は体験型・参加型で探究活動と協同的な学習をすることによって、知識をみんなで共有でき、本を読むだけでは実感できない行間を読み取るということが可能だと思います。

<小澤先生のレポート(1) 小澤先生のレポート(3)>

小澤 紀美子(こざわ きみこ)先生プロフィール

小澤紀美子先生

東京学芸大学名誉教授、東海大学特任教授
現在の専攻は「環境教育方法論」。現在は「子どもの居場所づくり」「住民参加とまちづくり」「持続可能な社会をめざす環境教育」を主なテーマとして研究を進めている。環境教育の方法論や実践に関する研究を進めてきているが、特に、英独米を中心に展開されている新しい環境教育のカリキュラムや実践の分析を通して、日本型環境教育や「総合的な学習の時間」のための参加型学習のワークショップなどを教師、行政、地域、専門家と協働し、授業づくりやカリキュラムの提案・普及を行ってきている。