環境教育とワークショップ

今回は、東京学芸大学教授・東海大学特任教授の小澤紀美子先生にお話を伺いました。小澤先生のご専門の環境教育を通して、子どもの教育やそれに関わる大人の行動を様々な視点からアプローチしていただきました。

日本での環境教育学確立までの道のり

STREETWORK―The exploding school―

私の専攻は建築学です。大学院修了後、民間の研究所を経て、東京学芸大学生活科学学科に採用されました。家庭科の先生を養成する生活科学学科で、住まい・まちに関する教育を担当することになりました。どう具体的に関わっていくかということで、10年間、さまざまな教科書を使用しながら試行錯誤して、自分なりの研究テーマである「豊かな住生活を考える―住居学」を確立しました。また、学生に対しては、教育を文献だけで語っても、「教育」の意義を伝えることが困難であると考え、小・中・高校の実践を通して自分なりに教育学を確立していく方針をとりました。そんな葛藤があった中、イギリスでは、チャリティー財団に対して、企業が資金を援助して、そこで人工環境づくりをめざしたいろいろな教材が作られているということを知りました。比較的日本でも使用しやすいものでした。そのときに感じたのは、イギリスでは日本に比べて近代化が早く進み、そのための対応があらゆる場面で実施されていたことです。1960年代~70年代、子どもたちが荒れた時期に『STREETWORK―The exploding school―』という本が出版されました。その中では、学校の中だけで学ぶのではなく教室を越えて学ぶ、つまり街中にも様々な学びの舞台があるということが示されています。私は人工的環境への学びを通して、自分たちの生活環境をいかに創っていくかということに興味を持ちました。1990年に大学時代の仲間と日本環境教育学会を発足させ、実際に何度か訪英してイギリスで展開されている方法を学びました。イギリスの環境教育に共感するところがありましたので、イギリスに関連する組織からも支援していただきながら、イギリスで実施している環境教育やまちづくり教育の実態を視察に出かけたものです。そこでは参加型・体験型学習が展開されていて、環境教育の本質を学び取ることができました。このときに、私はデザインすることの意義を学びました。具体的には、子どもたちが実際に校庭改善を実践する教育です。学校の校庭は、街との関係の中で考えていかなければならないということにも気付きました。これらの手法は先程の『STREETWORK―The exploding school―』という本に載っています。

ワークショップの大切さ

元来、ワークショップは、貧困層の中で実施されていたものでした。貧しいからこそ、貧困層が自分たちのコミュニティや家を作るときなどに、自分でやらなければ何もできないということから始まったものです。世界では識字率が低いという制限があるため、演劇で表現するというワークショップを行っていました。実際、読み書き能力を使用するより、体を使って表現する方が豊かに幅広く表現することができます。
参加型のワークショップでは「あなたの考え方は、この点では納得できるから、私は改めようと思う。だけど、あなたのここの考え方はどうかな」などと相手を認めながら、自分の意見も発言し、自分の考えを明らかにしていくという成果を出すことができます。 みなさんもご存知のノッポさんは「子どもを小さい大人として考えたい」、「小さい人は表現する言葉の獲得が少ないだけ」で、大人と子どもは同じ自我を持っていると主張しています。私も同感です。ですから、話すときも子ども扱いをせず、対等に話をします。実はそれこそがコミュニケーションの基本だと思います。子どもや大人にかかわらず、誰であろうと関係なく、お互いに認め合うことで、コミュニケーションをはかることができるのだと思います。
20世紀の日本は、ものごとを分断化して効率性を追いかけてきました。不確実性に高い21世紀においては、互恵の精神でそれぞれが持つ能力を互いに活かし合う相乗効果によって、経済的な尺度だけでははかれない豊かさを求め、持続可能な社会や地域づくりむかわなければなりません。我々自身が、安全・安心な社会・地域を創っていく主体なのです。そこで司馬遼太郎氏が『二十一世紀に生きる君たちへ』の中で書いていますが、私たちは普遍の価値としての「自然の恵み」を大事にしていく生き方が問われているだと思います。

小澤先生のレポート(2)>

小澤 紀美子(こざわ きみこ)先生プロフィール

小澤紀美子先生

東京学芸大学名誉教授、東海大学特任教授
現在の専攻は「環境教育方法論」。現在は「子どもの居場所づくり」「住民参加とまちづくり」「持続可能な社会をめざす環境教育」を主なテーマとして研究を進めている。環境教育の方法論や実践に関する研究を進めてきているが、特に、英独米を中心に展開されている新しい環境教育のカリキュラムや実践の分析を通して、日本型環境教育や「総合的な学習の時間」のための参加型学習のワークショップなどを教師、行政、地域、専門家と協働し、授業づくりやカリキュラムの提案・普及を行ってきている。