宇宙におけるリサイクル

今回は、宇宙におけるリサイクルについてです。廃棄物から資源を生み出す方法についてお聞きしました。小口先生は、宇宙における廃棄物処理の研究を行っているということですが、地球上での生活にも役立つものもあるということです。今後、みなさんにも身近な技術となりうるかもしれませんね。

将来の宇宙における排泄物処理

排泄物が水に変化する様子を説明する小口先生

宇宙での排泄物処理の研究とそのリサイクル利用について研究しています。簡単に説明すると、排水と固形物(うんち)などを混ぜ、どろどろの状態にし、温度と圧力をかけることによって、最終的には無色透明の有機物のない水にする技術です。その水を処理することによって、飲めるぐらいの水と植物の肥料になる水にすることができ、その肥料を使えば植物生産ができるようになります。生活の中でできた廃棄物がもう一度資源としてリサイクルされるという仕組みになっています。
宇宙用として開発していますが、地球上での災害時や山のトイレとしても有効だと考えています。密閉して処理するので匂いは出ないし、温度と圧力をかけるので紙や残飯などが混ざっていても一緒に処理できるなど、様々なメリットがあります。処理後に出る水は、窒素濃度が高いので河川に直接流すことはできませんが、トイレの水として再利用することはできます。 排泄物処理のための試験装置

廃棄物も資源に

有機物というのは、炭素・水素・窒素などの物質がいろいろと手をつないだ状態です。その手を切り離す処理を行うことにより、炭素分は最終的には炭酸ガスになり、窒素は硝酸性窒素つまり植物の肥料になります。おしっこに含まれるアンモニアというのは窒素と水素が手を結んだ状態なので、まだ完全に手を切り離せない状態です。ここで触媒を使うことによって、つないでいる手をさらに切り、リサイクル可能な状態まで切り離せるようになりました。最終的には、水と炭酸ガスになり、元々植物由来なので大気中に出しても問題ないのですが、私の場合は、ただ炭酸ガスを排出するのではなく、積極的にこれをまたエネルギーとして再利用しようと考えています。

宇宙でもリサイクルを目指す

資源のない宇宙では再利用が必須

この研究は、現在の宇宙ステーションなどではまだ出番がありません。ですが、将来月面基地や火星基地など宇宙で食糧生産が必要になった時、もしくは往復約3年かかる火星に人間が行くことになった時に、地球から物資を補給することやゴミを回収することは難しいので、何とかすることが必要になってきます。つまり私の研究はただの廃棄物処理ではなく、食糧生産を含めた宇宙での自給自足のための研究なのです。
宇宙において、今は全てが使い捨てです。着衣は2週間くらいで捨て、食料や排泄物も大気圏突入時に燃やして捨てます。研究用に地球に持ち帰るもの以外は燃してしまいます。ロシアでは宇宙船ごと燃してしまうこともあるくらいです。 燃えた時、灰になるというよりほとんどガス化しますが、少量とは言え、環境にはよくないことには変わりないと思っています。リサイクルできれば、環境にいいし、宇宙に持って行く物の量も減らせるので非常に効果的です。

<小口先生のレポート(1) 小口先生のレポート(3)>

小口 美津夫(おぐち みつお)先生プロフィール

小口美津夫先生

独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発本部 未踏技術研究センター 主任研究員 1971年、科学技術庁航空宇宙技術研究所(現:JAXA)に入所。2006年、宇宙にて安全でおいしい水を作り出す宇宙用水再生装置の研究開発を開始。2008年、生態工学会学術賞受賞。
現在、食品廃棄物、家畜ふん尿などを水資源、エネルギー資源として再利用するプロジェクトを展開中。宇宙出前授業やおもしろ宇宙実験教室等の宇宙教育でも活躍している。